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ビジネス実務法務2級 企業と従業員の関係(応用)

40問 / トルカ(https://toruca.app)

  1. 1. 普通解雇の有効性を判断する「解雇権濫用法理」の内容として最も適切なものはどれか。

    • A. 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利の濫用として無効とされる
    • B. 使用者はいかなる理由でも自由に労働者を解雇できる
    • C. 解雇権濫用法理は労働者側にのみ適用される考え方である
    • D. 解雇には一切の理由が不要であるとする考え方である

    正解: A. 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利の濫用として無効とされる労働契約法上、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効とされる(解雇権濫用法理)。使用者による解雇には、単なる主観的な理由だけでなく、客観的合理性と社会的相当性が求められる。

  2. 2. 懲戒解雇の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 労働者の非違行為に対する制裁として行われる、最も重い懲戒処分としての解雇
    • B. 懲戒解雇は普通解雇と全く同一の要件・効果を持つ
    • C. 懲戒解雇には就業規則上の根拠は一切不要である
    • D. 懲戒解雇を行う際、労働者への弁明の機会付与は一切考慮不要である

    正解: A. 労働者の非違行為に対する制裁として行われる、最も重い懲戒処分としての解雇懲戒解雇は、労働者の重大な非違行為(重大な業務命令違反、犯罪行為等)に対する制裁として行われる最も重い懲戒処分であり、就業規則上の根拠、行為の重大性との均衡、適正な手続(弁明の機会の付与等)が求められる点で、普通解雇とは性質・要件が異なる。

  3. 3. 解雇予告制度の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 使用者が労働者を解雇する場合、原則として少なくとも30日前の予告または30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要となる
    • B. 解雇予告は労働者からの請求があった場合にのみ必要となる
    • C. 解雇予告手当を支払えば懲戒解雇であっても常に理由を問わず有効となる
    • D. 解雇予告制度はパート・アルバイトには一切適用されない

    正解: A. 使用者が労働者を解雇する場合、原則として少なくとも30日前の予告または30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要となる労働基準法上、使用者が労働者を解雇しようとする場合、原則として少なくとも30日前にその予告をするか、予告に代えて30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならない(労働者の責めに帰すべき事由による解雇で労働基準監督署長の認定を受けた場合等は例外)。

  4. 4. 就業規則の不利益変更に関する原則として最も適切なものはどれか。

    • A. 労働者の合意なく就業規則を変更して不利益に労働条件を変更することは原則としてできないが、変更に合理性があれば例外的に効力が認められる場合がある
    • B. 使用者は労働者の同意なく自由にいつでも就業規則を不利益に変更できる
    • C. 就業規則の不利益変更は労働契約法上、一切禁止されている
    • D. 就業規則の変更は労働条件に一切影響を与えない

    正解: A. 労働者の合意なく就業規則を変更して不利益に労働条件を変更することは原則としてできないが、変更に合理性があれば例外的に効力が認められる場合がある労働契約法上、使用者が就業規則を変更することにより労働者の不利益に労働条件を変更することは原則としてできないが、就業規則の変更が労働者の受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性等に照らして合理的なものであるときは、例外的に変更後の就業規則が労働契約の内容となるとされている。

  5. 5. 私傷病休職制度の一般的な説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 業務外の傷病により労務提供ができなくなった労働者について、一定期間の療養機会を与える制度
    • B. 私傷病休職は労働基準法上、全ての企業に一律に義務付けられている制度である
    • C. 私傷病休職期間中は必ず全額の賃金を支払わなければならない
    • D. 私傷病休職は業務上の傷病にのみ適用される制度である

    正解: A. 業務外の傷病により労務提供ができなくなった労働者について、一定期間の療養機会を与える制度私傷病休職制度は、業務外の傷病(私傷病)により労務提供ができなくなった労働者に対し、就業規則等の定めに基づき、解雇を猶予して一定期間の療養機会を与える制度であり、法律上一律の義務ではなく各企業の就業規則の定めによる(休職期間満了時に復職できない場合、退職・解雇の扱いとなることが多い)。

  6. 6. 有期労働契約の「雇止め法理」の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 反復更新等により雇用継続への合理的期待がある有期労働契約の雇止めは、解雇権濫用法理が類推適用され、客観的合理性・社会的相当性を欠く場合は無効となりうる
    • B. 有期労働契約はいかなる場合も期間満了により当然に終了し雇止めに制限は一切ない
    • C. 雇止め法理は正社員の解雇にのみ適用される考え方である
    • D. 雇止め法理により有期労働契約は自動的に無期労働契約に転換される

    正解: A. 反復更新等により雇用継続への合理的期待がある有期労働契約の雇止めは、解雇権濫用法理が類推適用され、客観的合理性・社会的相当性を欠く場合は無効となりうる労働契約法上、有期労働契約が反復更新されている等の事情から雇用継続への合理的な期待が認められる場合、その雇止め(更新拒絶)については、解雇権濫用法理が類推適用され、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合には、雇止めが無効とされる(雇止め法理)。

  7. 7. 労働審判制度の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 労働審判官(裁判官)と労働審判員で構成される労働審判委員会が、原則3回以内の期日で個別労働紛争の迅速な解決を図る手続
    • B. 労働審判は必ず10回以上の期日を要する手続である
    • C. 労働審判の結果には一切の異議申立てが認められない
    • D. 労働審判は集団的労使紛争(労働組合との紛争)のみを対象とする手続である

    正解: A. 労働審判官(裁判官)と労働審判員で構成される労働審判委員会が、原則3回以内の期日で個別労働紛争の迅速な解決を図る手続労働審判制度は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会が、個々の労働者と事業主との間の個別労働紛争について、原則として3回以内の期日で審理し、調停の成立を試みながら、成立しない場合には労働審判を行う迅速な紛争解決手続である。当事者が異議を申し立てると訴訟手続に移行する。

  8. 8. 団体交渉に対する使用者の「誠実交渉義務」の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 労働組合からの団体交渉の申し入れに対し、使用者は誠実に対応し、合意達成の可能性を模索する義務を負う
    • B. 使用者は労働組合からの団体交渉の申し入れを常に一方的に拒否してよい
    • C. 誠実交渉義務は使用者が必ず労働組合の要求を全て受け入れることを意味する
    • D. 誠実交渉義務は労働組合法には規定されていない考え方である

    正解: A. 労働組合からの団体交渉の申し入れに対し、使用者は誠実に対応し、合意達成の可能性を模索する義務を負う労働組合法上、団体交渉を正当な理由なく拒否することは不当労働行為として禁止されており、使用者は団体交渉に応じるだけでなく、誠実に交渉に対応し、合意達成の可能性を模索する誠実交渉義務を負うとされる(ただし要求を必ず受け入れる義務までは負わない)。

  9. 9. 不当労働行為の類型として労働組合法に定められているものとして最も適切なものはどれか。

    • A. 労働組合員であることを理由とする不利益取扱い、団体交渉拒否、支配介入
    • B. 労働組合の結成を積極的に支援すること
    • C. 使用者が労働組合との間で労働協約を締結すること
    • D. 使用者が労働組合の活動に一切関与しないこと自体

    正解: A. 労働組合員であることを理由とする不利益取扱い、団体交渉拒否、支配介入労働組合法上の不当労働行為には、労働組合員であること等を理由とする不利益取扱い、正当な理由のない団体交渉拒否、労働組合の結成・運営に対する支配介入などが定められており、これらは労働委員会による救済命令の対象となりうる。

  10. 10. 労働協約の効力(規範的効力)の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効となり、労働協約の基準による
    • B. 労働協約は個々の労働契約の内容に一切影響を与えない
    • C. 労働協約は口頭の合意のみで効力を生じ書面化は不要である
    • D. 労働協約は労働組合員以外の全労働者にも当然に無条件で適用される

    正解: A. 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効となり、労働協約の基準による労働協約には規範的効力があり、労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分はその部分について無効となり、無効となった部分及び労働契約に定めのない部分は労働協約の基準による。

  11. 11. 労働基準法上の「賃金支払の5原則」に含まれないものはどれか。

    • A. 賃金は必ず年俸制で支払わなければならない原則
    • B. 通貨で支払わなければならない原則
    • C. 直接労働者に支払わなければならない原則
    • D. 毎月1回以上、一定の期日に支払わなければならない原則

    正解: A. 賃金は必ず年俸制で支払わなければならない原則賃金支払の5原則は「通貨払いの原則」「直接払いの原則」「全額払いの原則」「毎月1回以上払いの原則」「一定期日払いの原則」であり、年俸制での支払いを義務付ける原則は含まれない(年俸制であっても月々の支払いに分割する等、これらの原則を満たす必要がある)。

  12. 12. 賃金の「全額払いの原則」の例外として認められている措置として最も適切なものはどれか。

    • A. 法令に別段の定めがある場合(社会保険料の控除等)や、労使協定に基づく一定の控除
    • B. 使用者が一方的に賃金の一部を留保することはいかなる場合も一切認められない
    • C. 全額払いの原則には例外が一切存在しない
    • D. 賃金からの控除は労働者本人の同意があっても一切認められない

    正解: A. 法令に別段の定めがある場合(社会保険料の控除等)や、労使協定に基づく一定の控除賃金の全額払いの原則の例外として、法令に別段の定めがある場合(源泉所得税・社会保険料の控除等)や、事業場の労働者の過半数代表との労使協定がある場合(社宅費用の控除等)には、賃金の一部を控除して支払うことが認められている。

  13. 13. 育児・介護休業法が定める育児休業の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 原則として子が1歳(一定の場合は最長2歳)に達するまでの間、労働者が申し出ることにより取得できる休業
    • B. 育児休業は正社員のみが取得でき、有期雇用労働者は一律に取得できない
    • C. 育児休業の取得には使用者の裁量による許可が必要であり拒否も自由である
    • D. 育児休業は女性労働者のみが取得できる制度である

    正解: A. 原則として子が1歳(一定の場合は最長2歳)に達するまでの間、労働者が申し出ることにより取得できる休業育児・介護休業法上の育児休業は、原則として子が1歳(保育所に入所できない等の事情がある場合は最長2歳)に達するまでの間、労働者(男女とも、一定の要件を満たす有期雇用労働者も含む)が申し出ることにより取得できる休業であり、事業主はこれを拒否することができない。

  14. 14. 労働安全衛生法上のストレスチェック制度の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 常時50人以上の労働者を使用する事業場において、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査を年1回実施することが義務付けられている
    • B. ストレスチェックは全ての事業場規模を問わず義務付けられている
    • C. ストレスチェックの実施結果は労働者本人の同意なく使用者が自由に閲覧できる
    • D. ストレスチェック制度は労働者の身体的な健康診断のみを対象とする制度である

    正解: A. 常時50人以上の労働者を使用する事業場において、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査を年1回実施することが義務付けられている労働安全衛生法上、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を年1回実施することが義務付けられており、検査結果は本人の同意なく事業者に提供することはできない。

  15. 15. 労働安全衛生法における「産業医」の役割として最も適切なものはどれか。

    • A. 常時50人以上の労働者を使用する事業場に選任義務があり、労働者の健康管理等について専門的立場から助言・指導を行う
    • B. 産業医は経営判断そのものを行う機関である
    • C. 産業医の選任義務は全ての事業場規模に共通して課される
    • D. 産業医は労働組合の代表者を兼任しなければならない

    正解: A. 常時50人以上の労働者を使用する事業場に選任義務があり、労働者の健康管理等について専門的立場から助言・指導を行う労働安全衛生法上、常時50人以上の労働者を使用する事業場には産業医の選任が義務付けられており、産業医は労働者の健康管理、健康診断結果に基づく事後措置、長時間労働者への面接指導等について、専門的な立場から助言・指導を行う役割を担う。

  16. 16. 配転命令権の濫用が認められる場合として最も適切なものはどれか。

    • A. 業務上の必要性がない場合や、不当な動機・目的による場合、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合
    • B. 配転命令には濫用という概念自体が存在せず使用者は無制限の裁量を持つ
    • C. 配転命令は労働契約上の根拠がなくても常に有効である
    • D. 配転命令の濫用は業務上の必要性が高い場合にのみ認められる

    正解: A. 業務上の必要性がない場合や、不当な動機・目的による場合、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合配転命令権は労働契約や就業規則等に根拠があれば認められるが、業務上の必要性が存しない場合や、他の不当な動機・目的をもってなされた場合、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等特段の事情がある場合には、権利の濫用として無効となりうる。

  17. 17. 在籍出向の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 労働者が出向元との労働契約関係を維持したまま、出向先の指揮命令のもとで労務に従事すること
    • B. 在籍出向は労働者と出向元との労働契約を完全に終了させることを意味する(転籍と同じ)
    • C. 在籍出向には労働者の個別同意が一切不要である
    • D. 在籍出向は必ず海外の子会社への出向のみを指す用語である

    正解: A. 労働者が出向元との労働契約関係を維持したまま、出向先の指揮命令のもとで労務に従事すること在籍出向は、労働者が出向元との労働契約関係を維持したまま、出向先との間でも一定の労働関係に入り、出向先の指揮命令のもとで労務に従事する形態であり、出向元との労働契約を終了させ出向先との労働契約に完全に切り替える「転籍」とは異なる。就業規則等の根拠や労働者の個別同意(包括的同意で足りる場合もある)が必要とされる。

  18. 18. 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく「あっせん」制度の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 都道府県労働局の紛争調整委員会があっせん委員を選任し、当事者間の話し合いを仲介して解決を図る手続
    • B. あっせんの結果には必ず強制的な法的拘束力が生じる
    • C. あっせんは労働審判や訴訟に優先して必ず経なければならない前置手続である
    • D. あっせんは集団的労使紛争のみを対象とする手続である

    正解: A. 都道府県労働局の紛争調整委員会があっせん委員を選任し、当事者間の話し合いを仲介して解決を図る手続個別労働関係紛争解決促進法に基づくあっせんは、都道府県労働局に設置される紛争調整委員会のあっせん委員が、個別労働紛争について当事者間の話し合いを仲介し、双方の求めに応じて解決案を提示するなどして自主的な解決を促す手続であり、無料かつ非公開で迅速に利用できる特徴がある(合意が成立すれば民法上の和解契約としての効力を持つ)。

  19. 19. 退職勧奨と解雇の違いとして最も適切なものはどれか。

    • A. 退職勧奨は労働者に退職を促す事実上の働きかけであり、労働者が応じなければ雇用契約は終了しないが、解雇は使用者の一方的な意思表示により契約終了の効果を生じさせる
    • B. 退職勧奨も解雇も全く同一の法的効果を持つ
    • C. 退職勧奨は労働者の同意なく雇用契約を一方的に終了させる行為である
    • D. 退職勧奨には解雇規制と全く同一の規制が及ぶ

    正解: A. 退職勧奨は労働者に退職を促す事実上の働きかけであり、労働者が応じなければ雇用契約は終了しないが、解雇は使用者の一方的な意思表示により契約終了の効果を生じさせる退職勧奨は、使用者が労働者に対して自発的な退職を促す事実上の働きかけであり、労働者がこれに応じなければ雇用契約はそのまま継続する。これに対し解雇は、使用者の一方的な意思表示により労働契約を終了させる法律行為である点で法的性質が異なる(もっとも、執拗な退職勧奨は違法な権利侵害として不法行為責任を生じさせることがある)。

  20. 20. 労働契約の「黙示の合意」による労働条件変更が認められにくいとされる理由として最も適切なものはどれか。

    • A. 労働条件は労働者の生活に直結する重要な事項であり、明確な合意なく安易に変更を認めると労働者の保護に欠けるため
    • B. 労働条件の変更には常に書面が一切不要であるため黙示の合意で十分とされるため
    • C. 黙示の合意による変更は使用者に一切不利益を生じさせないため問題にならないため
    • D. 労働条件の変更は労働契約法の適用対象外であるため

    正解: A. 労働条件は労働者の生活に直結する重要な事項であり、明確な合意なく安易に変更を認めると労働者の保護に欠けるため労働条件は労働者の生活に直結する重要な事項であるため、労働契約の内容(特に不利益な変更)について黙示の合意が認定されるには慎重な検討が必要とされ、裁判例上も労働者の自由な意思に基づく明確な合意が重視される傾向にある。

  21. 21. 使用者が労働者から未払い残業代を請求された場合の実務上の対応として最も適切なものはどれか。

    • A. 労働時間管理の実態を確認し、固定残業代制度の有効性や消滅時効の成否等を含めて法的な検討を行う
    • B. 請求があれば理由の如何を問わず全額を無条件で即座に支払わなければならない
    • C. 未払い残業代の請求には一切の消滅時効が存在しない
    • D. 固定残業代制度を導入していれば残業代の追加支払いは一切発生しない

    正解: A. 労働時間管理の実態を確認し、固定残業代制度の有効性や消滅時効の成否等を含めて法的な検討を行う未払い残業代を請求された場合、使用者は労働時間管理の実態(実労働時間の把握状況)、固定残業代制度を採用している場合はその有効性(通常の労働時間の賃金部分と割増賃金部分の明確区分等の要件充足の有無)、賃金請求権の消滅時効の成否等を確認し、法的な検討を行ったうえで対応する必要がある。

  22. 22. 固定残業代(みなし残業代)制度が有効と認められるための一般的な要件として最も適切なものはどれか。

    • A. 通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを明確に区分できること
    • B. 固定残業代を導入すれば実際の時間外労働時間を一切把握しなくてもよい
    • C. 固定残業代制度には金額や時間数の明示は一切不要である
    • D. 固定残業代を上回る時間外労働があっても追加の割増賃金支払いは一切不要である

    正解: A. 通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを明確に区分できること固定残業代(みなし残業代)制度が有効と認められるためには、判例上、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを明確に区分できることが求められ、また固定残業代に含まれる時間数を超えて時間外労働を行わせた場合には、その差額を追加で支払う必要がある。

  23. 23. 秘密保持義務・競業避止義務を退職者に課す誓約書の有効性を判断する際に考慮される要素として最も適切でないものはどれか。

    • A. 退職者の出身地
    • B. 制限の期間・地域的範囲の合理性
    • C. 代償措置(手当等)の有無
    • D. 保護すべき使用者の利益の有無

    正解: A. 退職者の出身地退職後の競業避止義務等の有効性は、保護すべき使用者の利益(営業秘密の保護等)の有無、制限の期間・地域・職種の範囲の合理性、代償措置の有無等を総合的に考慮して判断されるとされているが、退職者の出身地はこれらの考慮要素には含まれない。

  24. 24. 使用者が労働者と合意退職を成立させる際の「退職合意書」に記載する条項として実務上重要なものはどれか。

    • A. 清算条項(当事者間に本合意に定めるほか何らの債権債務がないことを確認する条項)
    • B. 退職合意書には条項を一切設ける必要がない
    • C. 退職合意書は口頭でのみ有効であり書面化する意味がない
    • D. 退職合意書には秘密保持条項を設けてはならない

    正解: A. 清算条項(当事者間に本合意に定めるほか何らの債権債務がないことを確認する条項)退職合意書には、退職日・退職の種類(合意退職)の確認に加え、当事者間に本合意に定めるもののほか一切の債権債務がないことを確認する清算条項を設けることが、後日の紛争の蒸し返しを防止する観点から実務上重要である。

  25. 25. 整理解雇を回避するための「解雇回避努力義務」の具体例として最も適切なものはどれか。

    • A. 配置転換、出向、希望退職の募集、役員報酬の削減等の実施
    • B. 解雇回避努力は法律上要求されておらず使用者の任意である
    • C. 解雇回避努力義務は正社員の解雇にのみ課され有期雇用労働者には無関係である
    • D. 解雇回避努力とは労働者に一切の説明をせず即座に解雇する対応を指す

    正解: A. 配置転換、出向、希望退職の募集、役員報酬の削減等の実施整理解雇の有効性判断において重視される解雇回避努力義務の具体例としては、配置転換・出向の実施、希望退職の募集、役員報酬の削減、新規採用の停止等、解雇を回避するために合理的に期待される措置を講じたかどうかが検討される。

  26. 26. 採用内定の法的性質に関する判例上の考え方として最も適切なものはどれか。

    • A. 採用内定通知により、始期付解約権留保付労働契約が成立していると解される場合がある
    • B. 採用内定は法的な効果を一切持たない事実上の連絡にすぎない
    • C. 採用内定を取り消す場合、いかなる理由でも自由に取り消すことができる
    • D. 採用内定は労働契約とは全く無関係な独立の制度である

    正解: A. 採用内定通知により、始期付解約権留保付労働契約が成立していると解される場合がある判例上、新卒採用における採用内定通知により、就労の始期が付され、かつ一定の事由が生じた場合の解約権が留保された労働契約(始期付解約権留保付労働契約)が成立していると解される場合があり、内定取消しには解雇に準じた合理的な理由が必要とされる。

  27. 27. 長時間労働者に対する医師の面接指導制度の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 一定の時間数を超える時間外・休日労働を行った労働者の申出により、医師による面接指導を実施する義務がある
    • B. 面接指導制度は管理監督者には一切適用されない
    • C. 面接指導は労働者からの申出がなくても使用者が一方的に強制できる
    • D. 面接指導制度は労働安全衛生法には規定されていない

    正解: A. 一定の時間数を超える時間外・休日労働を行った労働者の申出により、医師による面接指導を実施する義務がある労働安全衛生法上、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申出があったときは、事業者は医師による面接指導を実施しなければならないとされている(研究開発業務従事者等には申出がなくても義務となる特則もある)。

  28. 28. 労働条件通知書に明示すべき「絶対的明示事項」の例として最も適切なものはどれか。

    • A. 労働契約の期間、就業の場所・従事すべき業務、始業・終業の時刻、賃金の決定・計算方法等
    • B. 従業員の趣味や特技
    • C. 会社の取引銀行名
    • D. 会社の株主構成

    正解: A. 労働契約の期間、就業の場所・従事すべき業務、始業・終業の時刻、賃金の決定・計算方法等労働基準法上、使用者は労働契約締結時に、労働契約の期間、就業の場所・従事すべき業務、始業・終業時刻、賃金の決定・計算・支払方法、退職に関する事項等の絶対的明示事項を、原則として書面(労働者が希望すれば電子メール等も可)により明示しなければならない。

  29. 29. 労働者の秘密保持義務に違反した場合に使用者が取りうる対応として最も適切なものはどれか。

    • A. 懲戒処分、損害賠償請求、差止請求(不正競争防止法上の営業秘密に該当する場合)等を検討する
    • B. 秘密保持義務違反があっても使用者は一切の対応を取ることができない
    • C. 秘密保持義務は口頭で伝えただけでは一切効力を生じない
    • D. 秘密保持義務違反は必ず刑事罰のみで対応しなければならない

    正解: A. 懲戒処分、損害賠償請求、差止請求(不正競争防止法上の営業秘密に該当する場合)等を検討する労働者が秘密保持義務に違反した場合、使用者は就業規則等に基づく懲戒処分、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求、当該情報が不正競争防止法上の「営業秘密」に該当する場合はその使用・開示の差止請求等、複数の法的対応を検討することができる。

  30. 30. パワーハラスメントの典型的な行為類型として厚生労働省の指針が示すものとして最も適切なものはどれか。

    • A. 身体的な攻撃、精神的な攻撃、過大な要求、過小な要求、個の侵害等
    • B. 適正な業務指示や指導は全てパワーハラスメントに該当する
    • C. パワーハラスメントは身体的な攻撃のみを指す概念である
    • D. パワーハラスメントには行為類型の分類が存在しない

    正解: A. 身体的な攻撃、精神的な攻撃、過大な要求、過小な要求、個の侵害等厚生労働省の指針では、職場におけるパワーハラスメントの代表的な言動として、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6類型が例示されている(業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指導はパワーハラスメントに該当しない)。

  31. 31. M&Aに伴う事業譲渡において、譲渡対象事業の従業員の労働契約を承継するための実務上の対応として最も適切なものはどれか。

    • A. 個々の労働者から労働契約の承継(転籍)についての個別の同意を取得する必要がある
    • B. 事業譲渡をすれば従業員の労働契約は個別同意なく当然に譲受会社へ承継される
    • C. 労働契約の承継には従業員の同意は一切不要である
    • D. 事業譲渡では労働契約は必ず全て終了し再雇用は一切認められない

    正解: A. 個々の労働者から労働契約の承継(転籍)についての個別の同意を取得する必要がある事業譲渡は個別の権利義務の移転(特定承継)であるため、労働契約についても会社分割のような包括承継の効果はなく、譲渡対象事業の従業員の労働契約を譲受会社に承継させるためには、個々の労働者から転籍についての個別の同意を得る必要がある。

  32. 32. 会社分割に伴う労働契約の承継に関する労働者保護の仕組み(労働契約承継法)の内容として最も適切なものはどれか。

    • A. 分割対象事業に主として従事する労働者は、その労働契約が原則として分割計画等に従い承継会社等に承継され、異議申立ての機会も設けられている
    • B. 会社分割では労働契約は一切承継されず、全員が退職扱いとなる
    • C. 労働契約承継法は労働者への異議申立ての機会を一切認めていない
    • D. 会社分割に伴う労働契約の承継には労働者の関与が一切不要である

    正解: A. 分割対象事業に主として従事する労働者は、その労働契約が原則として分割計画等に従い承継会社等に承継され、異議申立ての機会も設けられている労働契約承継法上、会社分割において分割対象事業に主として従事する労働者は、分割計画(契約)にその労働契約が承継される旨の定めがある場合、原則としてその定めに従い労働契約が承継会社等に承継される。労働者には事前の協議や異議申立ての機会が設けられ、一定の場合には労働者の意思に反する承継・不承継を争うことができる。

  33. 33. 労働者派遣における「派遣可能期間(事業所単位の期間制限)」の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 同一の事業所において派遣労働者を受け入れることができる期間は原則3年が上限とされ、延長するには過半数労働組合等からの意見聴取が必要となる
    • B. 派遣可能期間には一切の上限が存在しない
    • C. 派遣可能期間の制限は個人単位の期間制限と全く同じ内容である
    • D. 派遣可能期間の延長には労働者本人の同意のみで足り意見聴取は一切不要である

    正解: A. 同一の事業所において派遣労働者を受け入れることができる期間は原則3年が上限とされ、延長するには過半数労働組合等からの意見聴取が必要となる労働者派遣法上、同一の事業所において派遣労働者を受け入れることができる期間(事業所単位の期間制限)は原則として3年が上限とされ、これを延長するためには、派遣先の過半数労働組合等からの意見聴取の手続を経る必要がある(これとは別に、同一の派遣労働者を同一の組織単位で受け入れられる期間の上限を定める個人単位の期間制限もある)。

  34. 34. 使用者が労働者の内部通報(公益通報)を理由に不利益な取扱いをした場合の法的効果として最も適切なものはどれか。

    • A. 公益通報者保護法上、通報を理由とする解雇は無効となり、その他の不利益取扱いも禁止される
    • B. 内部通報をした労働者に対しては使用者が自由に懲戒処分を科すことができる
    • C. 公益通報者保護法は通報者の保護について一切規定していない
    • D. 内部通報を理由とする不利益取扱いは常に適法である

    正解: A. 公益通報者保護法上、通報を理由とする解雇は無効となり、その他の不利益取扱いも禁止される公益通報者保護法上、労働者が一定の要件を満たす公益通報(法令違反行為の通報)を行ったことを理由とする解雇は無効とされ、降格・減給等その他の不利益な取扱いも禁止されている。これにより、労働者が萎縮することなく組織の不正を通報できる環境の整備が図られている。

  35. 35. 変形労働時間制の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 一定期間を平均して法定労働時間の範囲内に収まるようにすることを条件に、特定の日・週の労働時間が法定労働時間を超えることを認める制度
    • B. 変形労働時間制を導入すると法定労働時間の規制自体が完全に撤廃される
    • C. 変形労働時間制はいかなる業種にも一律に義務付けられる制度である
    • D. 変形労働時間制の導入には労使協定等の手続が一切不要である

    正解: A. 一定期間を平均して法定労働時間の範囲内に収まるようにすることを条件に、特定の日・週の労働時間が法定労働時間を超えることを認める制度変形労働時間制(1か月単位・1年単位等)は、一定の期間を平均して1週間当たりの労働時間が法定労働時間の範囲内に収まることを条件に、特定の日・週において法定労働時間を超えて労働させることを認める制度であり、導入には就業規則の定めや労使協定の締結・届出等の手続が必要となる。

  36. 36. フレックスタイム制の説明として最も適切なものはどれか。

    • A. 一定の清算期間内の総労働時間をあらかじめ定め、労働者が各日の始業・終業時刻を自主的に決定できる制度
    • B. フレックスタイム制では労働時間の管理が一切不要になる
    • C. フレックスタイム制は必ずコアタイムを設けなければ導入できない制度である
    • D. フレックスタイム制は管理監督者にのみ適用される制度である

    正解: A. 一定の清算期間内の総労働時間をあらかじめ定め、労働者が各日の始業・終業時刻を自主的に決定できる制度フレックスタイム制は、一定の清算期間(最長3か月)における総労働時間をあらかじめ労使協定で定め、その範囲内で労働者が各労働日の始業・終業の時刻を自主的に決定できる制度であり、コアタイム(必ず勤務すべき時間帯)を設けるかどうかは任意である。

  37. 37. 従業員の内部告発(外部への公益通報)が保護されるための要件として最も適切なものはどれか。

    • A. 通報内容の真実性を信じるに足りる相当の理由がある場合等、公益通報者保護法上の一定の要件を満たすこと
    • B. 外部への内部告発は理由の如何を問わず一切保護されない
    • C. 外部への通報は事前に社内窓口への通報を経なくても常に無条件で保護される
    • D. 内部告発の保護要件は一切法律に定められていない

    正解: A. 通報内容の真実性を信じるに足りる相当の理由がある場合等、公益通報者保護法上の一定の要件を満たすこと公益通報者保護法上、行政機関や報道機関等の事業者外部への通報(外部通報)が保護を受けるためには、内部通報よりも厳格な要件(通報対象事実が生じていると信じるに足りる相当の理由がある、勤務先が正当な理由なく調査を行わない等の一定の要件)を満たす必要がある。

  38. 38. 定年後再雇用制度における労働条件の見直しについて、判例上留意すべき点として最も適切なものはどれか。

    • A. 定年前後で職務内容等に変更がないにもかかわらず、賃金を大幅に引き下げることは、不合理な待遇差として問題となりうる
    • B. 定年後再雇用者の労働条件は使用者が無制限に自由に決定でき、いかなる待遇差も問題にならない
    • C. 定年後再雇用制度は法律上禁止されている制度である
    • D. 定年後再雇用者には労働契約法・パートタイム有期雇用労働法が一切適用されない

    正解: A. 定年前後で職務内容等に変更がないにもかかわらず、賃金を大幅に引き下げることは、不合理な待遇差として問題となりうる定年後の再雇用にあたり労働条件(特に賃金)を引き下げること自体は許容される場合があるが、職務内容・責任の程度等に定年前後で実質的な変更がないにもかかわらず、大幅な賃金引下げを行うことは、同一労働同一賃金の考え方に照らして不合理な待遇差として問題となりうる点に留意が必要である。

  39. 39. 使用者が試用期間中の労働者について本採用を拒否する場合の法的な位置づけとして最も適切なものはどれか。

    • A. 本採用拒否は解約権の行使(留保解約権の行使)にあたり、通常の解雇よりも広い範囲で認められる余地はあるが、無制限に自由なわけではない
    • B. 試用期間中はいかなる理由でも無制限に自由に本採用を拒否できる
    • C. 本採用拒否には解雇に関する規制が一切適用されない
    • D. 試用期間という制度は労働契約法上一切認められていない

    正解: A. 本採用拒否は解約権の行使(留保解約権の行使)にあたり、通常の解雇よりも広い範囲で認められる余地はあるが、無制限に自由なわけではない試用期間付き労働契約は、判例上、解約権留保付労働契約と解されており、本採用拒否(留保解約権の行使)は、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合等、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と認められる場合に限り認められるとされ、通常の解雇よりは広い範囲で認められる余地があるものの、無制限に自由なわけではない。

  40. 40. 社内での人事考課(人事評価)の結果を巡る紛争が生じた場合、企業側が留意すべき事項として最も適切なものはどれか。

    • A. 評価基準・評価プロセスの客観性・透明性を確保し、評価結果を裏付ける記録を整備しておくこと
    • B. 人事考課の結果には一切の説明責任が生じない
    • C. 人事考課は経営者の主観のみで決定してよく客観的根拠は一切不要である
    • D. 人事考課を巡る紛争は法律上一切争うことができない

    正解: A. 評価基準・評価プロセスの客観性・透明性を確保し、評価結果を裏付ける記録を整備しておくこと人事考課(人事評価)は使用者の裁量に委ねられる部分が大きいものの、著しく合理性を欠く評価や恣意的な評価は、賃金・昇進等の処遇に関する紛争において問題視されうるため、評価基準・評価プロセスの客観性・透明性を確保し、評価の根拠となる記録を整備しておくことが、紛争予防・対応の観点から重要である。